氏は残念ながら2015年に亡くなってしまいましたが、幸運なことに来日の機会に2度ほど生演奏を聴きに行くことができました。
長年マーク6を愛用していたことでも有名ですが、晩年はヤマハの82Zアンラッカー仕様(F#キー付き)を使っていましたね。
私も初めに購入したアルトはヤマハのYAS-275でしたが、フィルウッズ氏の美しい音色に憧れてヤマハの82ZULに買い替えました。
さて、フィルウッズ氏のアルトは82Zのプロトタイプと言われています。
複数本の試作品の中から気に入って手に取ったものがたまたま82Z のアンラッカー仕様だったと何かの本で読んだことがあります。
感動で手が震えてあまりうまく撮影できていませんが、ご本人のアルトです。
【Phil Woods氏のセッティングデータ】
さて、プロトタイプということでよく見てみると微妙に市販品とは異なることがわかります。
まずネックスクリューですが、
通常のヤマハサックスには設定のないライヤースクリューが確認できます。
ネジ一本でけっこう吹奏感は変わるのでそれなりに影響はあるでしょう。
またネックはG1ですがエンブレムが黒色のヤマハマークとなっています。
旧タイプのエンブレムですね。
そして、サムフックが面積の広いものに交換されています。
手ぶれで申し訳ありませんが、ご確認いただけるでしょうか。
ブランドまではわかりませんが、アメリカ本国で入手したとなるとsaxgourmetでしょうか。
日本だと石森管楽器製のサムフックが似たような形状をしています。
親指にかかる荷重が分散するので、右手が痛くなりやすい人には良いアイテムの1つです。
サムレストは確認できませんでしたが、おそらくヤマハ純正品だと思います。
82Zユーザーの方は少しパーツをカスタムすればフィルウッズ仕様にすることができますね。
ちなみにラッカー仕様とアンラッカー仕様の82Z吹き比べたことがありますが、吹いた抵抗感も、出た音も大分異なりました。
ラッカーは直線的に音が飛んでいくイメージで、アンラッカーはより抵抗感が少なく、音色もダークになります。
やはりジャズ系を志向する場合にぴったりの楽器かと思います。
晩年フィルウッズ氏は呼吸器系の疾患があったのか、ライブの間でも呼吸が苦しそうに見えました。
フィルウッズ氏が残した82Zへのコメントの中に「82Zは良く鳴るからマイクはいらないよ」というのがありました。
もともとヤマハの楽器は鳴らしやすいことが特徴としてあげられます。
特にアメリカのミュージシャンの間では人気があります。
ヤマハの楽器は上位機種になると音響焼鈍工程を経ます。(*下位機種では設定なし、またはネックのみ)新品の楽器はまだ十分に鳴らないので、ある程度工場で鳴りやすくしておく処置のことと聞きました。
したがって少ない息でも効率よく音に変え、アンラッカーの楽器なので立体感のある音を得ることができ、フィル氏のサポートになったのでしょうか。
とはいえ、ヤマハを吹いてもセルマーを吹いてもやはりフィルウッズはフィルウッズのあの音がしますね。
晩年を日本製の楽器が支えたと思うと感慨深いものがあります。
You Tubeより壮大なストリングスにのせて気持ちよさそうに吹いているPhil氏の映像です。楽器はちょっと視認しづらいですが、ヤマハかと思われます。
ただただ・・美しいですね。
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